欧州排出量取引制度(EUETS)は、2005年から運用が開始されたキャップ・アンド・トレード型の排出量取引制度です。2005年の運用開始から2007年までの期間を第1フェーズといい、現在、第2フェーズ(2008年~2012年)を運用中です。キャップ・アンド・トレード型では、制度の対象となる企業や施設に対し、一定期間中の排出量の上限(キャップ)が課されます。EUETSで対象となっているのは、発電、鉄鋼、セメント、紙パルプなど大型直接排出源の施設です。加えて、2012年から航空部門が対象に含まれ、2013年以降の枠組みでは、アルミや化学等の分野にも対象が拡大されます。
第1、第2フェーズでは、このような対象設備に対し、EU加盟国政府が国別割当計画(NAP)の策定を通して排出上限を決定し、EUAと呼ばれる排出枠を割当てます。対象施設は割当てられた排出枠よりも少なくなるように、実際に排出量を抑えなくてはなりません。排出上限よりも実際の排出量を少なく抑えられた施設は、余剰の排出枠を市場で売ることができます。一方で、上限を超えた排出をしてしまう企業は、自ら排出削減努力をするか、超過分を市場から買ってこなければなりません。市場から買ってくる排出枠には、EUAのほか、京都議定書で定められたクリーン開発メカニズムや共同実施からのクレジットも使用することができます。
EUETSでは、上限を超えた排出をしてしまった企業に対しては、1t排出が超過する毎に40ユーロ(第1フェーズの場合)または100ユーロ(第2フェーズの場合)の罰金が課されます。また、超過した排出量分だけ、次の年で排出できる量が少なくなります。

第3フェーズ(2013年~2020年)では、第1、第2フェーズのような国別割当計画による割当を行わず、欧州レベルで割当総量を設定し、2005年比で21%削減となるよう毎年1.74%ずつの割合で割当総量は減少されます。
また、これまで無償割当が大半を占めていた割当方法についても、第3フェーズでは大きく変更します。例えば発電部門の対象施設は、一部の例外を除き、オークションにより原則100%排出枠を購入しなければなりません。
全体では、オークションの比率は、2013年の20%から2020年には70%へと増大し、2027年には100%となることが目指されています。
国際競争力への配慮が必要なセクター等に対しては、ベンチマークに基づく無償割当が行われます。
第3フェーズにおける割当総量や割当方法等に関する検討状況は以下の通りです。
- 2010年10月、欧州委員会は2013年の割当総量を20億3,915万2,882t-CO2とする決定を採択(新たに対象となる部門やガスを含む)。
- 2010年10月、欧州委員会はベンチマーク策定に関する決定案(53の製品ベンチマーク、熱・燃料ベンチマーク等を公表。2010年12月、欧州委員会の気候変動委員会が同決定案を承認。
- 2010年11月、オークションのタイミングや運営等についての規則を定めたオークション実施規則が発効。