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4. 海外の国内排出量取引制度 4-3. 米国・カナダの状況

米国の状況

 米国では、オバマ大統領のリーダーシップの下、連邦レベルでの排出量取引制度の導入に向けた法案が2009年6月に下院本会議を通過しました。 その後、2009年9月及び2010年5月に上院でも排出量取引制度の導入を提案する法案が提出されましたが、いずれも法案成立には至っていません。 一方、州レベルでは、既に排出量取引制度を導入、又は導入に向けた検討が活発に行われています。

連邦レベル

 2009年3月、米国下院のワックスマン議員とマーキー議員が、エネルギー自給率の拡大やGHG排出削減を目指す包括的な法案(通称ワックスマン・マーキー法案)を発表しました。米国のGHG排出削減目標として、2005年比で2020年までに20%削減、2050年までに83%削減を掲げ、目標達成のためキャップ・アンド・トレード式の排出量取引制度の導入を提案し、2009年6月に下院本会議で可決されました。 また、2009年9月には、米国上院のケリー議員とボクサー議員が、CO2排出削減やクリーンエネルギー分野での雇用創出を実現する包括的な法案(通称ケリー・ボクサー法案)を発表しました。ワックスマン・マーキー法案と同様にケリー・ボクサー法案では、米国のGHG排出削減目標として、2005年比で2020年までに20%削減、2050年までに83%削減を掲げ、目標達成のためキャップ・アンド・トレード式の排出量取引制度の導入を提案し、2009年11月に上院環境公共事業委員会で可決されました。さらに、2010年5月、米国上院のケリー議員とリーバーマン議員が、排出量取引制度の導入を含む、包括的な気候変動・エネルギー法案(通称ケリー・リーバーマン法案)を発表しました。ケリー・リーバーマン法案で提案されている排出量取引制度に関する主な内容は以下の通りです。
  • 削減目標:規制対象セクターのGHG排出量を2005年比で2013年に4.75%、2020年に17%、2050年に83%削減する
  • 対象:エネルギー部門及び産業部門の排出源で、段階的に対象を拡大する
  • 割当総量(キャップ):2013年から2050年以降について、毎年の割当総量が定められている。キャップは、2013年の47億2,200万t-CO2から対象部門が増える2016年に一時的に増加するが、以降、2050年の10億4,300万t-CO2まで引き下げられる
  • 割当方法:制度対象者や国際競争にさらされる部門への無償割当に加え、オークションによる収益を消費者支援等に分配する
  • バンキング:無制限に可能
  • ボローイング:翌年の排出枠は無利子で可能とするが、2年後以降5年後までの排出枠は、利子付きで一定の上限まで可能
  • 遵守オプション:遵守には、国内及び海外のオフセット・クレジットを最大20億トン利用できる

 上記のいずれの法案についても法案成立には至らず、米国第111議会(2009~2010年の2年会期)の閉会に伴い廃案となりました。また、2010年秋に行われた中間選挙において民主党が上下院で議席を減らしたことで、今後連邦レベルでの排出量取引制度導入の見通しが不透明になっています。
 以上のように、連邦レベルでの排出量取引制度導入の見通しが不透明な一方で、大気浄化法(CAA)に基づく米国環境保護庁(EPA)による排出規制がGHGの排出にも適用される動きが広がっています。EPAは、GHG年間排出量が一定以上の大規模排出施設の新設/改修を行う排出源に対して、大気浄化法に基づき建設前及び操業許可の取得を義務付けるGHG排出調整規則を2011年1月から適用しました。同規則では、GHGの排出抑制のため、利用可能な最善の抑制技術(BACT)の採用が義務付けられています。また、EPAは2010年12月23日、米国全体のGHG排出量のおよそ40%を占める、化石燃料を使用する発電所や石油精製施設からのGHG排出に対処するための規制案を、2011年に発表する予定であることを明らかにしました。

州レベル

 北東部地域GHG削減イニシアティブ(RGGI)とは、 米国北東部10州における発電所を対象とした排出量取引制度導入のイニシアティブで、2009年に開始されました。参加州は、2020年までにGHG排出量を現在比20%削減することを約束しています。この制度の特徴は、オークションにより排出枠の割当がなされる点です。これまでに10度のオークションが開催されています。
開催日 オークションの結果
ビンテージ 売却量 約定価格 参加者数
第1回
2008年9月25日
2009年 12,565,387t-CO2  3.07ドル/t-CO2  59
第2回
2008年12月17日
2009年 188,076,976t-CO2  3.38ドル/t-CO2  69
第3回
2009年3月18日
2009年 31,535,765t-CO2  3.51ドル/t-CO2  50
2012年 2,175,513t-CO2  3.05ドル/t-CO2  20
第4回
2009年6月17日
2009年 30,887,620t-CO2  3.23ドル/t-CO2  54
2012年 2,172,540t-CO2  2.06ドル/t-CO2  13
第5回
2009年9月9日
2009年 28,408,945t-CO2  2.19ドル/t-CO2  46
2012年 2,172,540t-CO2  1.87ドル/t-CO2  12
第6回
2009年12月2日
2009年 28,591,698t-CO2  2.05ドル/t-CO2  62
2012年 1,599,000t-CO2  1.86ドル/t-CO2  8
第7回
2010年3月10日
2010年 40,612,408t-CO2  2.07ドル/t-CO2  51
2013年 2,091,000t-CO2  1.86ドル/t-CO2  9
第8回
2010年6月9日
2010年 40,685,585t-CO2  1.88ドル/t-CO2  43
2013年 2,137,993t-CO2  1.86ドル/t-CO2  10
第9回
2010年9月8日
2009/10年 34,407,000t-CO2  1.86ドル/t-CO2  45
2013年 1,312,000t-CO2  1.86ドル/t-CO2  6
第10回
2010年12月1日
2009/10年 24,755,000t-CO2  1.86ドル/t-CO2  38
2013年 1,172,000t-CO2  1.86ドル/t-CO2  4

 西部気候イニシアティブ(WCI)は、2007年2月に発表されたイニシアティブです。参加地域全体のGHG排出削減目標として、2020年までに2005年比15%削減を掲げ、キャップ・アンド・トレード型排出量取引制度の導入を目指しています。現在では、米国とカナダからの11州が参加、またメキシコの州も含む15州がオブザーバーとして参加しています。WCIは、2012年からの制度導入に向けて2008年9月に制度設計案を発表し、2010年7月には制度設計の詳細を公表しています。

企業レベル

 アメリカでは、企業主導の自主的な動きも広がっています。シカゴ気候取引所(CCX)では、自主参加型のキャップ・アンド・トレードプログラムが2003年から開始されました。同プログラムには、これまで300社を超えるGHG排出削減目標を負う企業やクレジット供給する企業が参加してきましたが、CCXは、2010年10月21日、同プログラムを第二期(2007年~2010年)で終了することを発表しました。2011年からは、新たなオフセット登録簿プログラムが開始される予定です。

 米国気候行動パートナーシップ (USCAP)は、2007年1月デュポン社、フォード社、シェル社等の企業と環境保護団体が結成しました。連邦議会に対しGHG排出削減の数値目標を設定すること、技術の開発・普及促進のための国家プログラムを整備すること等を求めています。2011年現在、27の企業・団体がメンバーとして参加しています。

カナダの状況

 カナダ政府は2007年4月、国内の温室効果ガス削減計画(Turning the Corner)を発表しました。同計画では、GHG総排出量を、2006年比で2020年までに20%、2050年までに60-70%削減することを目標としています。 2008年3月、新たな詳細案が発表され、排出量取引制度案が明らかになりました。今後、2010年からの施行を目指して、パブリックコメントを設けながら、最終案を作成していく予定です(2011年2月現在未実施)。
削減目標
  • 規制対象セクターの既存施設の原単位当たりの排出量を2006年比で2010年までに18%削減。その後、毎年2%削減。
  • 2004年以降操業開始の施設については、3年間の猶予期間の後、毎年原単位2%の削減。
  • 2020年以降2025年までに、原単位目標から絶対目標への移行を目指す。
履行手段
  • 目標を達成できない企業は、目標を超過達成した企業からクレジット取得が可能。クレジットの発行は、実排出原単位を目標原単位より少なく抑えられた企業に対して、生産量を乗じた総量で行われる。
  • 2010~2017年まで、一定の利用上限のもと、技術基金への拠出によるクレジット取得が可能。
  • 2008年以降の削減を対象とする、国内のオフセット制度からのクレジットが利用可能。
  • 1992~2006年に行われた早期削減に対して発行されるクレジットが利用可能。
  • CDMのクレジット (10%を利用上限とする。植林CDMを除く。)利用可能。

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