オーストラリア連邦政府は2008年7月、排出量取引制度の設計案を示した「グリーンペーパー」、また12月には最終的な制度案である「ホワイトペーパー」を発表しました。国際競争力にさらされている産業等については、排出枠の無償割当が予定されていますが、オークションによる割当が大半とされています。政府は2009年5月、2011年からの排出量取引制度の導入を目指し、排出量取引制度関連法案(CPRS)を議会に提出しました。しかし同法案は、6月に議会下院で可決されたものの、8月に上院で否決されました。政府は10月に同法案を再提出しましたが、やはり議会上院で否決されてしまいました。2010年2月、政府は、同法案の修正版を議会に提出し、議会下院で可決されました。2010年4月、ラッド首相(当時)は、同法案が議会の合意を得られないことや気候変動に関する国際交渉の遅れを理由に、CPRSの導入を2013年以降に延期すると発表しました。しかしこのことが同首相の支持率低下の引き金となり、2010年6月に労働党の党首を辞任し、オーストラリア初の女性首相となるギラード首相が就任しました。ギラード新首相は2010年9月、排出量取引制度や炭素税など炭素価格の導入に向けたオプションを検討する気候変動委員会を組織し、2011年2月までに4度の会合を開催しています。同委員会における検討の結果、政府は2011年2月24日、炭素価格付け制度の制度案を発表しました。同制度案の主な内容は以下の通りです。
- 早ければ2012年7月1日より排出量取引制度を開始予定。
- 発電、運輸、産業プロセス、廃棄物、および漏洩排出由来のGHG排出量を対象とする。
- 制度開始後3~5年間は、固定価格による排出量取引制度を導入する。価格は、事前に決定され、毎年引き上げる。その後、市場価格による排出量取引制度へと移行する。(移行時期等については、遅くとも固定価格期間が終了する1年前までに決定する予定。)
上記制度を導入するためには、議会両院の過半数の合意を得て、法案が可決される必要があります。また、制度導入時の具体的な固定価格や、対象部門の段階的な拡大、家庭や産業部門への支援措置等については、同委員会にて今後も検討が継続される予定です。
その他、オーストラリア政府の地球温暖化局(Australian Greenhouse Office)主導で、企業、大学、病院等約700の事業体が自主的に参加しカーボン・オフセットを実施するGreenhouse Friendly Initiativeが、2001年から2010年6月まで運用されていました。2010年7月からは、National Carbon Offset Standard(NCOS)が実施されています。
また、連邦政府に先駆けて、2002年からニューサウスウェールズ州が、電力関連業者を対象とする排出量取引制度を運用してきた実績があります。
2007年9月、ニュージーランド政府はニュージーランド排出量取引制度(NZETS)の制度案を発表しました。 2008年9月に法案が可決され、まずは森林部門に対し制度の導入を開始しました。しかし、2008年11月の総選挙で労働党に代わり国民党が勝利したことにより、排出量取引制度の見直しを検討する特別委員会が設置されました。同委員会が、意見募集や公聴会の結果を踏まえ、排出量取引制度の導入を提言する内容の報告書を公表したことで、政府は2009年9月、排出量取引制度を含めた気候変動対策修正法案を議会に提出し、11月に可決されました。2010年7月には、エネルギー、運輸、産業部門へと新たに対象を拡大しました。今後は2015年までに、農業、廃棄物部門へと対象を順次広げていく予定です。

